Feb 2, 2022
Column

再構築補助金採択事例と採択のポイントについて解説⑤

事業再構築補助金はコロナ禍によるビンチを救い、社会の流れや人の価値観の変化をチャンスに変える企業を支援する国内過去最高規模の補助金制度です。

このコラムでは、コロナ禍の逆境を好機と捉えて事業の成長を図りたい!あるいは、そうせざるを得ない!という現状に直面されている事業主様やそんな事業主様を支援する立場の方々に向けて、成功事例のポイントを分析しながら事業再構築補助金のメリットを最大限に活かす発想のヒントをお伝えしております。

今回の事例企業

居酒屋経営から新時代ニーズを捉えた高齢者配食サービス事業への大転換!

こちらの会社は和歌山県で居酒屋3店舗をメインに営む創業19年の企業です。飲食店といえばコロナ禍で一番大打撃を食らっている業界であることは皆様周知の通りだと思われます。今回の会社も例に漏れず2020年の12月〜2021年の3月にかけては軒並み売上高前年比50%未満の達成率(3ヶ月平均は44.9%の達成度)というかなり厳しい状況に見舞われています。コロナ禍の先行きは見通しが立たない状況、同社は思い切って高齢者の配食事業に参入することにしました。

参入市場の特徴としては、まずターゲット顧客となる高齢者の人数は全国的に年々増加。

同社の立地する和歌山県でも高齢者は増加の一途を辿っています。

高齢者の増加に伴って高齢者向けのサービスの市場規模は軒並拡大するのは明らかです。今回の新事業である高齢者向けのメディカル給食、在宅配食サービスの市場規模も堅調に増加傾向。今後より一層の市場拡大が見込まれています。市場拡大にともなって美味しさや安全性などより質のよいサービス提供が求められることも予想されます。

同社は長年飲食店を経営していることから当然調理・提供ノウハウは持っています。また、3年前より病院の厨房業務を受託するヘルスケア事業もおこなっていることから病気、怪我、障害などにより調理・提供方法への配慮が必要な方へのノウハウや、新事業現場での人材育成ノウハウも持っています。一方、新事業である高齢者配食事業を行うにあたって「高齢者向けの献立考案ノウハウ」や「顧客管理」など運営面での弱みはあるものの、高齢者配食サービスのフランチャイズに加盟することによって未経験による弱点を見事にカバーしています。補助金を活用して新設する予定の厨房は日頃使っておらず賃貸として貸し出していた自社所有の倉庫であり、自社リソースの最適化という意味でも本事業がこの会社にとって意義のあるものになることが伺えます。

既存事業の強みと外部の協力企業、そして今後成長が見込まれる市場機会をしっかりと捉えて確実に成長発展できそうですね!

クロスSWOT

・補助金利用経費

厨房新設工事、設備一式 

 

・採択のポイント

まず採択のポイントとして突筆すべきは緊急事態宣言特別枠であること!でしょう。既存事業が飲食店を主たる事業としていることでかなり緊急性が高い事業再構築であることは明らかです。

通常枠と比較して緊急事態宣言特別枠は圧倒的に採択率が高いです。

第3回公募の採択率

ちなみに、緊急事態宣言特別枠に応募できる条件としては

2021年1-9月のいずれかの月の売上高が前年(or前々年)の同月比で30%以上減少していること(売上高でなく付加価値で45%以上減もOK)。

👉(緊急事態宣言特別枠の必須条件)
2021年1-9月のいずれかの月の売上高が前年(or前々年)の同月比で30%以上減少

特に飲食店の場合は固定費が協力金より上回っている場合は加点になるので、当てはまる場合は必ず組み込んだほうがいい内容です。

👉(加点)
2021年1-9月のいずれかの月の固定費(人件費、家賃、光熱費等)>協力金 

また緊急宣言特別枠になると補助率がアップします。

👉(補助率)
通常:2/3⇨緊急事態宣言特別枠3/4

※中小企業の場合。上限額は従業員数によって異なる

 

採択率、補助率共に緊急事態宣言特別枠の要件に当てはまる場合は間違いなくそちらで申請したほうがいいですね!!!

そのほか審査項目・加点項目より採択のポイントになったと考えられるは以下の通りです。

高齢者の増加による高齢者関連市場の拡大はかなり明らかなことによるニーズの存在。また競合に対する差別化要因として、事業計画書内では同地の同業他社は小規模な個人事業主、企業の場合も副業的な位置付けであり損益分岐点ギリギリの営業であることなどを明確に示し、同社が社運をかけた独立事業として他の既存の同業を上回る規模感で参入することの優位性を具体的に示しています。

貸し倉庫としていた自社未使用のスペースを新事業の要となる厨房として活用することは「選択と集中」「リソースの最適化」という観点からもよりよい資産の有効活用と捉えられますね。

 

また、同地の後期高齢者数、今後の需要の見込みによる市場規模、同社の目標シェア率と想定売上高から逆算した雇用創出の可能性についても具体的に示してあります。

 

(計算方法)事業計画書より引用

・同地の後期高齢者人口のうち4人に1人が高齢者配食サービスを利用
60,000人×25%=15,000人
・同地の高齢者配食市場全体の市場規模(売上高ベース)
15,000人×2食/1日×500円/回×362日=54億円

市場規模は54億円と予想

・当社はシェア10%(売上高5.4億円)獲得を目標とする

・人件費率30%とすると→1億6200万円分の雇用創出
・当社パート従業員の給与平均は100万円

つまり、、、パート従業員162名の雇用創出!!

あくまでも計画ではありますが、計算方法が明確なので納得感がありますね。

まさに、コロナによってピンチとなった飲食業から思い切った事業転換をして、V字回復。

サービスそのものによる顧客への価値提供だけでなく、雇用創出による地域社会の発展にも貢献!成長市場にいち早く参入することによる経済成長の牽引!顧客、事業主、従業員、地域、全方位に笑顔になれそうなプランが説得力を持って語られているお手本のような事業計画書でした。

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